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国家 I 種渡辺ゼミ
平成12年度合格者S君
渡辺ゼミ活用法−国 I 法律職に1回で合格するには?−

 国 I 法律職に短期間で合格するには何をすればよいのでしょうか? 試験勉強の方法論は人によって千差万別でしょうし、自分に適した方法を既に見つけている人にとってはこの問いかけは無用でしょう。しかし、私は文学部出身だったために法律の知識は皆無であり、また、法律職の専門試験では判例・条文等の幅広い知識が求められるため、試験勉強を始めた当初は、大海の荒波に翻弄される小さな舟のように、自分の針路を定められないでいました。試験に合格した今、自分の試験勉強を振り返ってみると、効果的だった点、反省すべき点などがあります。そういったことを踏まえて、法律の前提知識がなかった私がいかにして渡辺ゼミを有効に活用し、国 I 法律職合格までたどり着いたかを綴りつつ、これから法律職合格に向けて試験勉強を始める皆さんの参考になればと願い、私の方法論を紹介したいと思います。

 私が試験勉強を始めたのは、本試験前年の4月でした。試験の情報収集もかねて、Wセミナーの講義を受けて勉強することに決めていたものの、なにも用意をしないまま講義を聞いてもあまり意味が無いのではないかと思ったので、「上位合格講座」が始まる7月までは、憲法・行政法・民法の基本書を通読することにしました。専門試験50問のうち6割の30問を占める、この3科目の攻略が最重要と考えたからでした。基本書は、芦部『憲法』、原田『行政法要論』、川井『民法入門』をそれぞれ読みました。しかし、緊張感があまりなかったのと、読んだ内容を吸収しようという気持ちがなかったため、深い理解はあまり得られず、表面的に用語等を学んだにとどまりました。

 7月からは、Wセミナーの「上位合格講座」が始まり、講義を聞いてはその復習をするという毎日になりました。講義を聞く、というのは受け身な行為ですから、自分なりに講義の内容を消化するようにしなければ、効果的ではありません。私は、テキストにある過去問を、講義の内容にあわせて解くということを復習としてやっていました。しかし、テキストの過去問は過去15ヵ年分の氷山の一角に過ぎないので、入ってくる知識の量は限られるし、この頃は講義を聞いて満足していたような気持ちだったので、わずかながらのインプットされた知識が整理されずに、雑然と頭に入っていく状態でした。

 そんなとき、「国 I 法律職渡辺ゼミ」の存在を知りました。パンフレットを見ると、受講対象に、「来年是非とも合格したい方」とあったので私は飛びつきました。徹底的に過去問の演習をするというそのゼミで勉強すれば、自発的に勉強するよりも効率的かもしれない、と思ったからでした。選抜試験のために、まだ講義が始まっていなかった、商法・刑法・労働法のテキストを1ヶ月で通読し、なんとかゼミに入ることができました。それは11月のはじめ、私の試験勉強の中で大きなターニングポイントになったのです。

 渡辺ゼミでは、受講生はランダムに指名され、最近4〜5ヵ年の過去問の肢について一つずつ多角的に詳細な説明を求められます。すなわち、ただ問題を解いて正解の肢を見つけるだけでなく、誤りの肢はどこがどのように間違っているのか、また、その周辺知識についても説明しなければならないのです。ですから、渡辺先生の質問攻撃に耐えうるだけの、念を入れた予習と過去問についての深い理解が必要になります。1回目の憲法で自分の知識の浅薄さを思い知った私は、2回目以降、防御体制を整えるべく、予習に多くの時間を割きました。

 渡辺先生が繰り返しおっしゃる予習(過去問演習)の方法があります。例えば、憲法の平成11年の問題1の肢1について、芦部『憲法』、佐藤幸治『憲法』等の基本書の該当部分の余白に、「11−1−1」と記入します。また、判例があれば、判例百選にも同様に記入し、判例六法にもチェックを入れます。そうして、1問に最低30分は時間をかけて検討するのです。すると、過去15ヵ年分の問題を解き終えた頃には、どの部分(判例)が頻出なのか、または、未出題かが一目瞭然になるのです。私は、この方法で法律科目の過去問をすべて解き、過去問の分析を体得しました(使用した基本書は、内田『民法』、塩野『行政法』、前田『手形・小切手法』、大塚『刑法入門』、菅野『労働法』、山本『国際法』)。これは、ただ漫然と過去問演習をしていても、なかなか身につかないものです。渡辺ゼミで教えられたこの方法で過去問演習をすれば、肢番号を記入するときに自然と周辺の記述も読むことになり、インプットした知識を体系的に整理できるようになります。また、過去問と基本書を往復することで、基本書のどの部分がどのように出題されるのかもわかります。

 渡辺ゼミ I 期の間は、毎週毎週この方法で各科目の予習をすることで精一杯でした。ゼミで解く問題は最近4〜5ヵ年分だけですが、予習をして、ゼミで指名されたときに頭をフル回転させて答えることで、最近の過去問の傾向はつかめたし、それまで雑然としていた知識をきちんと比較的短期間に計画的に整理できたと思います。ゼミ I 期は2月の始めに終わりました。次に渡辺先生が指示されたことは、「3月末までに全科目の過去問15ヵ年分を1回まわす」ということでした。既に渡辺先生についていく(!)ことを決めていた私は、残った約10ヵ年分を終わらせるため、1日にどのくらいの問題をやるか逆算して計画を立て、とにかく過去問演習をしました。2〜3月はインプットの講義は少なくなるものの、模試(渡辺先生は1年目の人は教養や過去問を優先するように言っておられましたが・・・)が毎週のようにあっても思うような結果を出せず、自分の勉強方法に不安を抱くこともありました。しかし、前述の方法で1問1問丁寧に分析し、予定を少しオーバーして4月の頭にはすべて解き終りました(ただし、経済学は苦手意識を払拭できなかったため事情系に絞り、理論の過去問は解きませんでした)。その後、過去問については、5月の模試までに2回目をまわし、本試験までに3回目をまわすのが知識の定着を考えると理想です。私は、1回目に、○=もうやらなくてよい安心問題、△=正解したが理解が不安なのでもう1回解いたほうがいい問題、×=間違えた問題と3分類し、2回目以降は△と×の問題を解くようにして時間の効率化を図りました。まずは、過去問の正解率を8〜9割にすることが大切ですから、このしつこいほどの過去問演習は強固な土台になったと思います。

 過去問に加えて必要なのが、未出題分野の攻略です。すなわち、新判例やマイナー分野ですが、これについては模試や重要判例解説で補うほかありません。また、渡辺ゼミ II 期では2次論文対策のほかにも、新判例についてレジュメが配布されます。私は、新判例が多く出題されるセミナーの模試で痛い目にあったため、最近3ヵ年分の重判とゼミのレジュメで本試験直前期に判旨を読んで、その理論構成や周辺知識を理解するようにしました。また、セミナーの「択一答練」も未出題分野の攻略に使いました。新判例はどの判例が出るのかあまり予想がつかないものですが、それまでに過去問の分析をしっかりやっていれば、どういう判例が出題されやすいかはある程度わかるはずです。また、最近何年か出題されていない分野があったら、そこは出題される可能性が高いといえます。今年でいえば、直前期にヤマをはって、憲法の思想・良心の自由、法の下の平等、商法の利得償還請求権について、ヤマが当たりました。このように、過去問の分析はヤマをはる基礎にもなるので、徹底的にやっておいて損はありません。

 国 I 法律職では1次試験の成績が重要であることは周知の事実です。しかし、文学部だった私は、法律論文の書き方がわからなかっため、2次論文試験も大きな不安要素でした。そこで、論文対策として渡辺ゼミ II 期も引き続き受講しました。 II 期では、論文を書いて提出すれば、渡辺先生に添削してもらえるので、論点落ちがないか、論理的一貫性があるかなど、法律論文の書き方を徹底的にしこまれます。択一の勉強もしながら論文を書くのは多少辛かったものの、1週間に1本を目標に書き上げ、毎週添削していただきました。答案構成や論点のピックアップなど、論文には慣れが必要なので、直前期の時間が貴重なときに少しでも論文対策をしておいたのは有効でした。また、ゼミでは優秀答案をレジュメにして配布するので、他の人がどんな答案を書くのかがわかるし、自分で答案構成をするときの参考にもなります。2次試験については対策をほとんどしないまま受験する人が多いので、他の人より一歩リードするためにも、最小限の時間で効率的な勉強を心がけて対策を立てるべきだと思います。

 以上が、私の試験勉強の方法論です。こうして振りかえると、11月の渡辺ゼミ受講を境に、私の試験勉強に対する姿勢は変わったと改めて思います。国 I の受験生には2年目の受験という人が多いので、1回目の受験の人は知識量の少なさに、当初は呆然とすると思います。私も、過去問を眺めてもまったく答えを導き出せなかった最初の頃は、「本当に合格できるレベルに達することができるのか」と不安に思ったものでした。しかし、渡辺ゼミで強制的(?)に過去問演習をしたことで、知識量は着実に増えていきましたし、渡辺先生の質問攻撃にも理路整然と答えられるようになりました。1問に最低30分はかける私のやり方は、なかなか勉強が進まず、また、結果も出せずに焦るというものでしたが、地道に過去問をつぶしていくうちに、以前より問題がわかるようになったと思える時が来るはずです。結果は本試験で出せばいいわけですから。皆さんが所期の目標を達成されるよう願っています。がんばってください。

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